第4の携帯キャリア
楽天が、新たに周波数の割当を総務省から正式に認定された。これにより楽天は国内「第4の携帯キャリア」としてスタートすることになる。
膨大な初期投資
MVNOの「楽天モバイル」が急成長し、次に自前でMNOを行うのは自然だと三木谷社長は主張しているが、この主張に首を傾げている人は多い。
MNOとして全国に通信網を構築するのには、莫大な初期投資がかかる。楽天は最大約6000億円を投資するとしているが、日本の高品質でときには過剰な通信品質に到達するためにこの金額で足りるかは不透明だ。
携帯電話の開発を主導していた時代と異なり、今のユーザーが求める携帯キャリアの役割は、いわゆる「土管」であり、通信品質と価格だ。価格に敏感なユーザーはMVNOを選択し、品質を求めるユーザーがMNOを維持しているのが現状だ。
楽天がキャリアとしてユーザーを獲得するにはMVNOより安いか同等の価格にする必要があるが、本当に可能なのだろうか。
今までのIT企業としてのノウハウを用いてコスト削減に繋げるとしているが、その手法はソフトバンクがすでに行い、後発キャリアながら今の地位を築いた。しかも、当時はiPhone専売という追い風もあった。スマートフォン市場も飽和しつつある現在で、あのようなパラダイムシフトが起きる気配がない。
勝算はどこに?
それでも楽天が勝算があると考えているのは、国内9000万人といわれる楽天会員の存在だろう。会員に対して特典を付与し、広告すれば多くのユーザーを獲得できると楽天は考えている。楽天会員が楽天キャリアに乗り換えれば、毎月『楽天スーパーポイント』が加算されることになる。
各キャリアもポイントによる囲い込みを強化している。ドコモはdポイント、auはWALLETポイント、ソフトバンクはTポイントがそれぞれ貯まる。MNOキャリアの中で、楽天キャリアが競合するソフトバンクのTポイントは「楽天スーパーポイント」の最大のライバルである。
日本で顧客獲得に重要な要素であるポイントのシェアを拡大して、メインビジネスである通販業の顧客を囲い込むのが、楽天が携帯キャリアに進出する一番の目的である。
承知のように、通販業ではAmazonが急激に追い上げてきている。見やすいインターフェイス、強力なリコメンド機能により、Amazonは多くの顧客を獲得している。
自前で商品を販売するのではなく、店舗に出店してもらう楽天モデルでは、どうしてもAmazonのようなサイトを構築できない。
また、最近ではAmazonプライム会員への特典を強化し、無料の動画配信などで顧客を囲い込んでいる。楽天は、携帯キャリアになることで携帯ユーザーを取り込み、通信料で貯まる「楽天スーパーポイント」を自分のサイトで使ってもらうことでAmazonに対抗しようとしているに違いない。
大切なのは通信品質と価格のバランス
高額な通信費を維持しし、ほぼ横並びの既存MNOに対抗するキャリアが生まれるのは歓迎だ。携帯ユーザーが何より求めるのは通信品質と価格のバランスだ。今から自前で全国に通信網を設置して、バランスを担保できるかが最も大きな課題となる。
まずはユーザー獲得よりも、楽天には通信品質の強化に専念してほしい。