宝島社より 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」 が発売になりました。私にとっては初の商業出版になります。
自分の小説が本屋に並ぶという中学生からの夢がようやく実現します! 興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

MENU

AirPodsを買ったらSiriと仲良くなろう

AirPodsは画期的な製品だが、ボタンがひとつもなく、Siriにお願いして操作してもらう思い切りの良い仕様になっている。

ここはSirを味方につけてAirPodsを便利に使ってしまおう。ヘッドホンをポンと2回叩けば、色々なことをお願いできる。

https://www.apple.com/v/airpods/c/images/overview/og.png?201701241608

「新しい通知」

iPhoneを使っているとアプリからの「通知」が貯まってしまう。Siriにお願いして、移動中に通知を処理してしまおう。着信したメールやメッセージを次々と読み上げることもできるし、返信も選択できる。返信すると、それ以降の読み上げを忘れてしまうのはご愛嬌。もう一度「新しい通知」とお願いしよう。

「妻にメッセージ」

帰宅途中に「これから帰るよ」と簡単にメッセージを送れる。

iPhone(というかiCloud)の連絡先では、自分の家族を登録できる。妻や夫、父や母など自分の家族を登録しておくとSiriにお願いしやすい。名前だと同じ名前や似た名前が連絡先に登録があると誤認識しやすい。「父さん」みたいなラフな言い方でも通じる。確認した限りだと、「父ちゃん」「母ちゃん」「ワイフ」「カミさん」「奥さん」いずれも認識してくれた。

iPhone同士ならメールよりもメッセージの方が早い。メールだと複数のアドレスが登録されている場合、どのアドレス宛に送信するか確認が入るが、メッセージだと携帯電話番号でやりとりできるので確認が要らない。

 「プレイリストの〇〇をシャッフル」

AirPodsを耳に装着しても自動で音楽を再生してくれない(再生後、片耳を外して一旦停止したときのみ、再度耳につければ自動再生する)。

「再生」で音楽を再生してくれそうだが、「何を再生しますか?」と訊かれてしまう。「音楽を再生」でもよいが、iPhoneに入っている全ての音楽を最初から聴きたい場面は少ないだろう。そういうときは「プレイリストの〇〇をシャッフル」と言えば、該当のプレイリストをシャッフル再生してくれる。プレイリストは口頭で伝えやすい名前にしておくと誤認識されにくい。プレイリストが曲名と被っていなければ「〇〇(プレイリスト名)をシャッフル」でもいける。

日本語のSiriだとアルファベットの曲名とプレイリストを認識してくれないので注意。

 「音量を8にして」

Siriに「音量をあげて」と頼むと2つボリュームをあげてくれる。一気に音量を上げたい場合何度も言わなければならず面倒だ。外出時に聴いているボリューム、自宅でのボリュームを覚えていれば、そのボリュームに調整できる。iPhoneのボリュームは16段階。「音声を最大にして」「音量を最低にして」と頼むこともできるが、最大ボリュームだと耳が壊れる。

 「次」

今は聴きたくない曲が流れたら、「次」でスキップできる。「スキップ」でも同じ動作をするが、「次」の方が短いし、認識されやすい気がする。

 「曲名は」

現在流れている曲の名前を教えてくれる。これもアルファベットの曲名だと発音がおかしい。設定でSiriの言語を英語にすれば解決するが、ネイティブ並の発音が求められる。

 

これ以外にも「明日の天気」「今何時」「家に帰る」などの情報を聞くことももちろんできる。Siriが誤認識してウザくなったら、イヤホンを二度叩こう。Siriの動作がキャンセルされる

Siriを使いこなせばAirPodsは、もっと便利になる。Siriにお願いする時周りに人がいると恥ずかしいが、ここはユーザー全員が臆せず使い続けて社会の方を馴致させてしまおう。

 

AirPods MMEF2J/A

AirPods MMEF2J/A

 

 

Webサービスはフリーミアムの箱から抜け出せるのか?

フリーミアムという幸福な時代

f:id:tkan1111:20170213113649p:plain f:id:tkan1111:20170213113721p:plain

2008年はクラウドベースのWebサービスが花開いた年だった。前年に開始したDropboxに続き、Evernoteがスタートした。

人々がスマホを使い始め、パソコンと合わせて複数の端末を所有するとデータの同期が課題になった。PCに保存した情報をスマホで参照したいし、スマホで情報を更新したとき、複数のバージョンの情報が混在すると使いづらい。

そこで登場したのがDropboxや、Evernoteだ。Dropboxは複数端末間のファイル共有と同期を行うオンラインストレージであり、Evernoteは複数のノートをクラウドに蓄積し、どの端末からでも検索・抽出できるようにした。

ふたつのサービスの特徴は初期使用料が無料だということだ。両方とも少ない容量しか使わないなら費用を負担する必要はない。いくつかの制限はあるが、95%以上の客は一円も払わず、より多くの容量で使いたいハードユーザーである数%の人だけが負担する費用で経営を成り立たさせるビジネスモデルで、フリーミアムと呼ばれた。

フリーミアムは、ユーザーと企業両方が幸福になるビジネスモデルだと言われていた。このモデルの背景には、Webサービスは無料というカルチャーがある。インターネット初期は、通信料金以外インターネット上のサービス・情報はほぼ全て無料だった。お金を稼ぐよりも、まずインターネットという新しい世界で人気をつかむことが大事だったのだ。太平洋を目指してアメリカ大陸を西へ向かった開拓民のような熱気が当時のインターネットには広がっていた。当時は通信料金が高かったので、サービスも有料にしたら誰もアクセスしないという理由もあった。

 

マネタイズに苦労するフリーミアム 

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/PAK85_kinkaiokanemochi20131005_TP_V.jpg

2010年を過ぎた頃から、Webサービスはマネタイズに苦労し始める。Webサービスの寡占化が進んだのがひとつの理由だ。

Gmail、Google MapなどGoogleが提供するサービスの品質は高く、もちろん無料だ。Googleのサービスや検索を毎日使用していても、Googleに直接お金を払った経験がない人は大勢いるだろう。もちろんGoogleも霞を食べているわけではなく、広告収入がGoogleのビジネスを支えている。

世界最大のWeb広告代理店となったGoogleだからできる手法で、中規模ベンダーは別の手法を取らざるをえない。

Evernoteが行ったのは無料ユーザーの機能を制限して、課金へ誘導することだ。一度便利さに慣れた人は不便な生活に戻れないとよく言われるが、それは代替手段がない場合で、Evernoteの代替ツールが、MicrosoftのOneNoteなど大勢ある。

tkan1111.hatenablog.com

既存ユーザーの機能を絞るEvernoteの施策はネットでの評判からは成功していないようにみえる。

 

企業ユーザーは無料が不安

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/OY151013069811_TP_V.jpg

では、どうしたらWebサービスを継続できるのか? ひとつの鍵はビジネスユーザーである。Webサービスは無料だと慣れきっている個人ユーザーと異なり、ビジネスユーザーは有料でも仕方がないと考える。

無料だとそのサービスがいつ停止しても、なくなっても文句は言えない。そんな不安定なサービスをビジネスで使用するのはリスクでしかない。無料であるが故、セキュリティの面で不安なWebサービスも多い。

ビジネスユーザー向けにサービスを展開して成功しているのがDropboxだ。Dropboxでは個人ユーザーは無料で使用できるが、ビジネスユーザーは有料だ。ビジネスユーザーだと、ユーザーアカウント管理ができて、不正なアクセスも防止できる。削除したファイルの復元、ファイルの更新履歴管理とビジネスの継続をサポートする機能が提供される。

Dropboxは年間売上予測が10億ドル、企業ユーザー数は12万社以上とビジネスが順調だと発表した。今年後半にはIPOも計画していると言われている。

jp.techcrunch.com

 

個人ユーザーも課金の覚悟が必要な時代

企業向けが好調だからかDropboxでは個人ユーザーへの機能制限は今のところないが、Webサービスは無料という幸福な時代は終わりを迎えようとしている。スマホゲームは課金が前提になり、新聞は無料で閲覧できる記事を制限している。課金を促す手法は昔より洗練化され、巧妙に無料ユーザーを絡め取ろうとしている。

今後も、我々がWebサービスを利用していくためには、良質なサービスを選別し、本当に自分にとって便利なサービスには課金する覚悟が必要なのもかもしれない。そうしないと広告収入をおさえるGoogleのような巨大企業しかWebサービスを提供しなくなる選択肢が乏しい時代になってしまう。

 

 

 

子供を切り捨てたNintendo Switchに勝算はあるか?

発売日から一ヶ月を切って、Nintendo SwitchのCMが流れはじめた。

f:id:tkan1111:20170115091127p:plain


www.nintendo.co.jp

家族はどこに?

コンセプト映像もそうだったが、家族で遊ぶ姿が映像にでてこない。大泉洋をメインキャラクターにしているので、大きくなってゲームを辞めた若年層とそれより少し上の層をターゲットしているのだろう。

3DSのCMは子供に人気がある嵐だった。任天堂のポータブル機はゲームボーイの頃から子供向けなので、ターゲットは変わっていない。

 

家族がターゲットだったWii U

Switchと同じ据置機であるWii Uはどうだったのだろう。Wii Uのローンチソフト『Nintendo Land』のCMでは家族が遊んでいる。

www.youtube.com

ライトゲーマーを獲得して売れに売れたWiiの後継機種として発売されたWii Uで、Wiiと同じ客層を狙ったのは当然だろう。だが、そのライトゲーマー層は、Wiiとの違いが見えづらかったWii Uへの買い替えは行わず、Wii Uの販売は不振を極めた。

 

ターゲットを変更した事情

Switchのローンチソフトである『1-2-Switch』の紹介映像には、『Nintendo Land』とは異なり家族がでてこない。Switchの映像からは子供が遊ぶ姿はほとんど見かけない。

 

Switch関連の機能で子供を対象しているのは、「みまもりSwitch」だ。子供が遊んだゲームを保護者が管理できる機能だ。子供がゲームをやりすぎる懸念はファミコンの頃からあるし、ネットに繋がる現代は不特定者とのコミュニケーションも親が気にするのはわかる。

www.nintendo.co.jp

Switchは子供から大人にターゲットを変更して、ボイスチャットなどのコミュニケーションも計画されているから、今まで以上に子供を保護したいのはわかるが、監視機能だけを強調されると子供がゲームをやってはいけないように思えてくる。

今までのメインターゲットである子供を切り捨てた理由はなんだろう? 少子化だろうか? ひとつの理由は子供が買うにはSwitchが高価になりすぎたからだろう。液晶画面をつけた据え置き機という仕様になったSwitchは、任天堂ゲーム機の中では最も高価だ。本体だけで3万円を超えると子供では容易に手が出ない。

ハードゲーマー向け据置機PS4とライトゲーマーが遊ぶスマホの間を狙ったSwitchは、いつでもどこでもジョイスティック付きで快適に遊べる液晶付き据置機というコンセプトで開発された。その結果、製造原価は上がり、子供ではなく大人をターゲットにせざるを得なかったのだ。

もちろん、そのターゲットはPS4とスマホでゲームを遊ぶ層と重複する。

ふたつのカテゴリーの狭間をSwitchが広げることができるか、押しつぶされるのか今後注目だ。

Nintendo Switch Joy-Con (L) ネオンブルー/ (R) ネオンレッド

Nintendo Switch Joy-Con (L) ネオンブルー/ (R) ネオンレッド

 

 

Apple Watchで買うべきバンドは?

Apple Watchはバンドを選べるのが愉しみのひとつだが、純正だけでも数が多すぎて何が最適かわからない人も多いと思う。

参考までに筆者が買ったベルトをレビューする。

f:id:tkan1111:20170117182102p:plain

最初に買うべきはスポーツバンド 

f:id:tkan1111:20170211012035j:plain

Apple Watchの登場は今までの時計の常識をいくつも壊した。身につけた部分に使うと腐食すると言われていたアルミニウムを本体に使用し、この価格帯では使われないような高水準のステンレスモデルを用意してきた。

従来の腕時計よりも簡単にバンドを交換できるようにして、服装や気分に合わせてバンドを変えやすくした。

工夫をこらしたバンドの中で最も画期的なのがスポーツバンドだ。

手首の太さに合わせて調整して余ったバンドの処理は今までの時計の課題だった。革バンドの場合、遊革という細長い革で余ったバンドを止めるのが一般的だが、遊革という名前の通り動くので、何かにぶつかるとすぐにずれてしまう。

スポーツバンドは、余ったバンドをバンドの下に差し込めるようにしてその課題を解消した。金属のピンをゴムに似たフルオロエラストマーの穴にはめるだけだが、バンドの先を差し込んでいるのでまったくずれない。

スポーツバンドといっているが、ブラックであれば大体の格好に合うから、万能でApple Watchのスタンダードといっていい出来だ。

最初は止めるのにコツはいるが、腕時計本体を下にしてバンドの端を引っ張るように押し込めば簡単に装着できる。

ちなみに、バンドの色によって重さが異なる。42mm用のスポーツバンドのブラックは40g、ホワイトは51gあり、11gの差がある。アルミケースの42mmモデルが30gだから11gの差は結構大きい。ランニングなどスポーツをする人は気になるかもしれない。

 

TPOにあわせてミラネーゼループを

f:id:tkan1111:20170211094806j:plain

スポーツバンドは万能だが、スーツで客先へ行くときなど躊躇する時もある。そういうときはミラネーゼループがよい。

ミラネーゼループも画期的なバンドで、従来の腕時計では使えなかったマグネットを使用し、バンドの長さを無段階で調整できる。マグネットで金属のバンドに止めるだけなので、手間がいらない。金属バンドだが、アルミニウムモデルに合わせても、それほど違和感がない(ブラックの本体にブラックバンドの方がマッチしている)。

欠点は、毛深いと腕の毛が挟まること、PCを操作する時金属のバンドが当たり傷がつきそうな気がすること、力を入れるとマグネットが少し緩むことか。あと、バンドの先端は傷つきやすいので注意が必要だ。バンドを交換する時に上下がわからなくなったときは(筆者だけ?)、バンドがループしている部分を時計の下につけると覚えておくとよい。

金属だから重そうだが、41g(42mm用)なのでほとんどの色のスポートバンドより実は軽い。

ジョギングするならApple Watch Nike+

f:id:tkan1111:20170211100842j:plain

バンドに穴があいているNike+バンドはブラック/ボルトモデルで25g(42mm用)で、スポーツバンドより軽いので、ランニングするなら買うべき。Nikeバンドは別売りしていないので、ほしいなら本体と一緒に購入するしかない。

穴が多いので微調整ができそうだが、Nikeバンドとスポーツバンドの穴が開いている間隔は同じ。スポーツバンドの欠点である通気性の悪さも解消している。

最軽量のバンドは?

f:id:tkan1111:20170211104032j:plain

初期のApple Watchの純正バンドで一番軽いのは、クラシックバックルだった。革製でもっとも標準的な腕時計のバンドのクラシックバックルは19g(42mm用)で、Nikeバンドよりも6g軽い。アルミニウムモデルにクラシックバックルで装着するとつけていることを忘れるほど軽い。革なので使用していると尾錠(金属部分のこと)の跡がつくのが難点か。

現在販売しているバンドで最も軽量なのはウーブンナイロンバンドだ。わずか12g(42mm用)しかない。スポーツバンドより通気性もよい。

ただ筆者は最近あまり使わなくなった。ウーブンナイロンは名前の通りナイロンの織物なので使っていてバンドの端がほつれてきたからだ。時計本体に付ける部分がプラスチック製で、金属製の他のバンドとくらべてカチッとはまらないのも交換する時に気になる。アルミニウムに見えるがバックルはステンレス製だ。水分を吸収するので走れば汗を吸収し、手を洗えば普通に濡れる。

バンドは複数持とう

簡単にバンドを交換できるのは今までの腕時計ではなかったApple Watchの大きな愉しみだ。日によってバンド交換するのは気分転換に良い。まずはスポーツバンド(かNikeモデルを購入)とミラネーゼループを買うことをお勧めする。

目がだめなら、耳がある。- ARの現状 -

昨日はVRだったので、今日はAR(Augmented Reality. 拡張現実)。ARは「現実世界に人工の情報を追加する技術」のこと。

スマホ画面から抜け出られない!

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/iphone7hello_TP_V.jpg

「Pokemon Go」で現実の風景の中にモンスターがスマホ画面に映るのもARの一種だ。スマホを夜空に向けると方位と場所を検知して、実際の夜空の画像に星座の名前を表示することもできる。このように現状のARはカメラで撮影した画像に情報を追加してスマホ画面へ表示するのが一般的だ。

この手法も多くの可能性はあるが、ずっとスマホ画面を見ていないとならない。これでは今までのスマホの映像がリアルになっただけで、我々の感覚もスマホアプリを使っているのと大して変わらない。

そこで、肉眼で見ている映像(実際は眼鏡越しだが)に情報を付与する、ドラゴンボールのスカウターみたいな装置の開発が進んでいる。

Microsoftの本気

代表的な製品がMicrosoftの『HoloLens』だ。

f:id:tkan1111:20170210141933p:plain

 

HoloLensは3D画像を現実の画像にオーバーレイできるので、ARの枠を出てMR(Mixed Reality.複合現実)の領域に踏み込んでいる製品ではあるが、現実の映像に情報を付加する構図はARもMRも変わらない。

Microsoftは米国以外でも日本でも開発者版を販売するなど、この分野に本気で取り組んでいる。

製品を見てもわかるとおり、HoloLensはかなり大仰である。これを装着して街を歩くシーンはちょっと想像できない。現にMicrosoftのPRビデオでも室内や研究室の使用ばかりだ。

映像に情報をリアルタイムに付加するだけなら、ここまで大げさな装置は必要ないはずだが、MicrosoftがHoloLens路線を選択したのは、過去の失敗の教訓があるからだ。

 

Google Glassはどこへいった?

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/be/Google_Glass_with_frame.jpg/300px-Google_Glass_with_frame.jpg

過去の失敗とはGoogle Glassだ。2013年に開発者向けに発売されたGoogle Glassは、眼鏡越しに見える現実に情報を付加して表示するAR端末だった。当初未来のデバイスだともてはやされたが、2015年にGoogleは一般販売を中止し、それ以降目立った発表はない。

HoloLensと比べるとよくわかるが、普通のメガネに近い外観はウェアラブル端末の本命と目され、(少なくても米国では)一般社会にも馴染むと考えられていた。

ところが、相手の知らないうちに隠し撮りができる機能や、なにより見た目が怪しいとアメリカでも敬遠されてしまった(個人的には他人の姿についてアメリカ人がそこまで気にするのは意外だった。オタクとみられるのが嫌だったのか)。

Google Glassの失敗を見て、他人とコミュニケーションする場でのメガネ型端末は成功しないとMicrosoftは判断したのだろう。VR端末と同様に、自宅や端末の使用が前提の限定されたエリアでの使用をMicrosoftはHoloLensで目指していると思われる。

 

目がだめなら、耳がある

目の近くにある機器を人が嫌悪するのは、会話するとき人の目を見るからかもしれない。口ほどにものを言う目に奇妙な機械がついていたら不審がって、腹を割って話しづらい。

他に機械をつけて怪しまれない五感といえば耳だ。最初は気味悪がられたウォークマン時代のイヤホン通話のための片耳ヘッドセットも、最近では認知度が進んできた。目がだめなら耳から音声情報を取り入れたらどうだろう。正面から来る人を内蔵カメラが認識し名前を教えてくれたり、店の前を通りかかったらバーゲンしていると教えてくれたら便利ではないだろうか。

下に突き出ているAirPodsの形状は変だと揶揄されたが、将来カメラを内蔵するためにわざとあんな形にAppleは作ったのかもしれない。イヤホンの形状でマイクを内蔵している製品はあるので、マイクのためだけだったら、突き出た部分は不要だろう。ARに使用するカメラを搭載するために、今からこの形に馴染んでおけとAppleは私たちに囁いている(?)。

 

覚える作業はコンピューターに任せて人は考える作業に自分の能力を使いたい。コンピューターは無尽蔵に記憶できるが、検索語句を入力して記憶を引き出すのは人間の役目だ。ARなら映像やGPS情報をもとに自動で最適な情報を抽出して表示できる。人の能力の拡張のためにARの進化に期待したい。

 

ここにない現実を見せるのがVR

PS VR発売以降、一般でもVRという言葉が浸透し始めた。新しいものが広まるためにキャッチーな製品は必要なので良い流れだと思うが、VRがどういったことなのか曖昧な人もいると思う。ARやMRやさらに新しい言葉もでてきたので、余計に混乱する。ここで整理しておきたい。

f:id:tkan1111:20170123143506p:plain

 

ここにない現実を見せる

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/161103195014DSCF7061_TP_V.jpg

VR(Vurtual Reality. 仮想現実)は、「ここにない現実をあるように見せる」技術である。当たり前のことを言っているようだが、必ずおさえておくべきポイントだ。

VRでは、現実に見えているものはゴーグルで視界を塞ぎ見えなくし、モニタに投影された世界だけを見えるようにする。そこに本当の現実はない。見せるものは、ここにはないが、どこかにあると思われる世界だ。

話は逸れるが、VRを仮想現実と訳したのが混乱のもとだ。「仮想」とは「仮に想定された」という意味で「仮想敵国」のように現実の状況から想定される概念を表す言葉だ。「仮想現実」と言われると、現実には存在しないが何かの意図をもって新たに構築された世界と勘違いしそうになるが、元のVRには全く新しい世界という意味合いは薄い(そういった意味で使用するケースもあるには、ある)。

VRは「人工で作られたもう一つの現実」の意味で「人工現実」と呼んだほうが筆者にはしっくりくる。

よく使われる「高い場所を綱渡りをする」デモ(現実は地面に置かれた棒の上を歩いている)はVRの典型だ。現実に何かを混ぜるのではなく、もうひとつの現実を作る。

VRの前提を理解したところで、VRが使えるビジネスが何か考えてみたい。

 

長年目指していたゲームの到達点

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/CCC9V9A9928_TP_V.jpg

まずはPS VRで代表されるVRだ。「ここにないものを体験する」のがゲームであり、解像度を高めて、よりリアルな体験をしてもらうためにゲーム業界は技術革新を続けてきた。本当に存在するように見せるVRはゲームのひとつの到達点である。長年ゲーム業界が目指してきたものなのだから、ゲームからVRが一気に広まったのは自然な流れだ。

 

カタログ

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/paku_akjfalsdjklasadfa_TP_V.jpg

よりリアルなカタログとしてVRは使える。ここにない土地をバーチャルで旅行したり、まだ建っていないマイホームを見学して仕様を確認したり、今までパンフレットや動画から想像しなければいけなかったことが、もっと皮膚感覚で理解してから購入できるようになる。売り手と買い手の認識も揃い、購入後のトラブルも減るに違いない。

 

トレーニング

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/N934_ktebukurowosurudrm_TP_V.jpg

手術や危険な場所での作業など、実際に体験するのが難しいジャンルでの訓練にもVRは有効である。何度失敗しても問題はないし、様々な種類のトレーニング環境を用意するのも容易だ。部屋の中でトレーニングができるので、トレーニングを受ける人の動作を録画して見返すのも容易なので、トレーニング後に適切な改善箇所を指摘しやすい。

 

基本をおさえて、広がるアイディア

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/PPO_denkyuunoirumine-syon_TP_V.jpg

「ここにない現実を体験できる」という前提をきちんと踏まえれば、VRを使って他にも様々なアイディアが今後でてくるに違いない。何がビジネスに生かせるか、考えてみると面白い。

 

Apple TVが映すAppleのジレンマ

Apple TVは、初代の発売から今年で10年目を迎える息の長い製品だ。初代はHDDを内蔵し、iTunesのビデオや音楽コンテンツを格納する機器だったが、用途が限られていて、ビジネス的に成功しなかった。それ以降もアップデートは続き、現役機種は4代目になるが、未だに爆発的にヒットとまで至っていない。

それでもAppleは諦めておらず、AmazonからFire TVの責任者をヘッドハンティングして事業を促進しようとしている。

www.bloomberg.co.jp

Apple TVの売上が伸びない原因からは、今のAppleが抱えるジレンマが透けて見える。

https://store.storeimages.cdn-apple.com/8561/as-images.apple.com/is/image/AppleInc/aos/published/images/a/pp/apple/tv/apple-tv-hero-select-201510?wid=538&hei=535&fmt=jpeg&qlt=95&op_sharpen=0&resMode=bicub&op_usm=0.5,0.5,0,0&iccEmbed=0&layer=comp&.v=vWwkV0

ローカルか? グローバルか?

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/fdghjkhbjhgfds_TP_V.jpg

Appleはグローバル共通の製品開発を好む。周波数や法律が各国で異なる中、iPhoneでもグローバル単一モデルでの販売を目指していた。

Apple TVがターゲットしている放送業界は通信業界以上に、国によって環境が異なる。というよりAppleの母国であるアメリカの環境が進みすぎていて、放送事情が他国と大きく異なっている。

国土が広く多様な人種を抱えるアメリカでは、地上波が送信できる限られた番組では全国民を満足させることができず、ケーブルテレビが発達していた。ケーブルテレビは有料なので番組にお金を払うことに日本人ほどアメリカ人は違和感がなく、1番組ごと買い切るPPV(Pay Per View)も一般的になった。資金が流れてこないからか、無料で提供されるアメリカの地上波の質は酷い。

最近では、そのケーブルテレビを解約する人が増えている。HuluやNetflixなどの動画配信サービスの隆盛が背景にある。最新のテレビにはNetfilixボタンがつき、ネットがあれば地上波のアンテナがなくてもテレビだけで多くのコンテンツを視聴できる。

eiga.com

二代目以降のApple  TVのターゲットはネットでコンテンツを観たいユーザーだ。動画配信サービス未対応のテレビでもApple TVがあればNetflixを視聴できる。iTunesで映画などのコンテンツもレンタルまたは購入できる。

日本をはじめ多くの国では、アメリカほどケーブルテレビが発達しておらず、地上波や衛星放送を視聴するのが一般的だ。例外は韓国でアメリカと同様ケーブルテレビの加入率が70%近いが、他国の加入率は20%以下だ。

動画配信サービスが伸びてきたとはいえ、地上波を全く観ない日本人は少ない。両方のコンテンツを観たい場合、Apple TVとテレビ本体の両方を扱わなければならず操作が煩雑になる。

昨年末にリリースされたApple TV向けアプリ「TV」はアメリカ専用だ。Apple TV上で動画配信サービスやiTunesのコンテンツを一括管理し、多くのコンテンツへスムーズにアクセスできるようにするアプリだ。こういった対応ができるのはコンテンツ管理がApple TVだけで完結するからで、地上波や衛星放送などチューナー経由のコンテンツが主体な日本では難しい。

iPhone 7でお財布ケータイといった日本独自の機能を組み込んだモデルを開発したように、Apple TVでも例えば三波チューナーを内蔵したローカル向けモデルが発売される日が来るのだろうか?

万能の利器であるが故の悩み

f:id:tkan1111:20170208183319p:plain

4代目Apple TVは、音声コマンドへの対応、リモコンのタッチインターフェイス、アプリの搭載が売りだ。だが、これらは全てiPhoneでもできる。音声コマンドはiPhone搭載のSiriの方が優秀だし、tvアプリよりiPhone向けアプリのほうが質量ともに充実している。Apple TVの用途で最も多いコンテンツの視聴も、もちろんiPhoneでもできる。

唯一iPhoneにできないのは大画面テレビへの投影だが、液晶サイズが拡大したiPhoneでの視聴でも満足できる人も多いし、コンテンツの投影だけならApple TVのような大仰な装置ではなくChromecastのようなUSB給電で稼働する簡易な装置でも構わない。

スマホをもってない人には、これだけで完結するApple TVは便利だと思うが、iPhoneを持っていないApple TVユーザーはどれぐらいいるのだろう?

 

Appleの岐路

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/HIRO_dasdsfa5_TP_V.jpg

Appleが全世界でシェアを拡大するためにローカルへの対応が必要だが、国の事情に合わせたモデルを開発すれば、開発費用が増大してしまう。

iPhoneのようにビジネス規模が大きければ、その費用も回収できるが、Apple TVの売れ行きは芳しくないし、”文明の利器”iPhoneにおされて、Apple TVだけしかカバーできない範囲は狭い。

十年前であれば、リビングの中心に君臨するテレビに自社製品を接続してもらう意味は大きかったが、タブレットやスマートフォンが増え複数の液晶モニターが家庭に存在する今はテレビの相対的価値は下がっている。

今のようなリッチなApple TVではなく、テレビへコンテンツを転送するだけのタイニーApple TVを発売した方が賢明だと思うが、どうだろう。

 

Fire TV Stick

Fire TV Stick

 

 

Uberは問題解決の美しき例

東京都内のタクシーが価格改定で、初乗り410円になった。近距離客を増やすのが目的だが、中にはUber(ウーバ)対策という報道もあった。

gendai.ismedia.jp

 

http://media.townhall.com/townhall/reu/ha/2014/272/2014-09-29T144026Z_1_LYNXNPEA8S0O9_RTROPTP_3_UBER-GERMANY-INJUNCTION.JPG

Uberはアメリカ発の配車サービスだ。既存のタクシーと異なり、Uberでは一般の人が自家用車を利用して客を運送できる。

初乗りの値段を下げて、今までタクシーを敬遠していた利用者を増やし、タクシーを利用する習慣をつけてもらい売上を増大させるのが今回の価格改定の目的だ。

値下げを決断した背景にはUberに代表されるシェアリングエコノミーのプレッシャーがある。日本では「白タク」規制が厳しく、Uber本来の一般人による配車サービスは今のところ行えていないが、東京オリンピックを前に規制緩和のプレッシャーは強くなる一方だ。規制緩和の前に顧客を囲い込みたい焦りを値下げから感じる。

ただ、値下げしてもUberには対抗できない。タクシーと比較してUberはそれほど安くない。Uberが優れているのは、タクシーが利用者が抱く不満を分析して、解決策を提示している点だ。

 

”店”を選べない

https://www.photock.jp/photo/middle/photo0000-2677.jpg

店舗販売などの業種と比べてタクシーは変わったビジネスモデルだ。タクシーを利用するときに、多くの人はタクシー会社を気にしない。選びたくてもタクシー乗り場に他の客が並んでいれば順番に来たタクシーに乗らざるを得ない(チケットでの利用や法人契約しているタクシーもあるが、ここではUberのターゲットである個人利用に限定して話す)。

牛丼を食べたくて入店したら、吉野家かすき家かどちらかの牛丼がランダムで出てきたら驚くだろう。タクシーではこういうケースが起きるのだ。利用客が選べないのだから、タクシー会社だけではなくサービスを提供するドライバーも利用するたびに異なる。

毎回客が違えば、サービスを向上させるモチベーションも湧きづらい(世界の中では日本のタクシーは品質が高いが)。頑張っても自社の利用客の増加に結びつきにくいし、個人タクシーであれば、ほぼ皆無だ。

一方、Uberではドライバーを利用客が評価することができる。高評価のドライバーは客から優先的に選ばれるし、逆に低評価が続けば商売ができなくなる。高いサービスを提供し、効率的な道順を覚えれば、自分の売上に繋がる。

密室空間

https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/PAK86_taxinaka15075427_TP_V.jpg

タクシーの中はドライバーと利用者の密室空間だ。客が一人ならドライバーと二人きりになる。客側は身分を明かしていないので運転手は誰を乗せているのかわからない。他の業種ではあまりない状況だ。宅配サービスであれば客側は個人情報を店側に渡しているし、店舗であれば他の従業員がいる。

タクシー強盗は、こういったタクシーならではの特殊な状況だから発生する犯罪だ。

Uberでは個人情報をUberが管理しているので密室での犯罪を防げる。ドライバー側も客を評価できるので、態度が悪く評判が良くない客をドライバーが拒否できる。タクシーで起きるリスクを事前に回避できるのだ。

支払額が不明

f:id:tkan1111:20170207224238j:plain

店で商品を買うときも、サービスを受けるときも支払額が予めわかっているのが普通だ。店でマッサージを受けるとき60分3,000円など価格を知ってからサービスを受ける。

タクシーは違う。行き先へ到着するまで支払額がわからない。ドライバーの経験則で質問はできるが交通事情により支払額は変動する。渋滞に遭遇すると、いくらかかるかドキドキしながら利用客は席に座っていることになる。

Uberは基本的に事前支払いだ。予約前から金額が判明している。

事前予約

http://a3.mzstatic.com/jp/r30/Purple71/v4/27/e4/08/27e40834-8ea6-e7a0-291e-ace54dfea935/screen696x696.jpeg

Uberは配車を事前予約するのが一般的な使い方だ。近くを走る空車をスマホで簡単に検索できるので、手間がかからない。一般のタクシーは大都市なら流しのタクシーを掴められるが、地方や夜間の繁忙期だと容易に捕まらない。タクシーを見つけて手を挙げたのに実車だった体験した人も多いだろう。Uberが発達した都市なら時間と場所を指定して簡単に予約できるので、タクシーを探して途方に暮れる苦労はなくなる。

最近では日本のタクシー会社も配車予約ができるアプリをリリースしているが、Uberより使い勝手が悪い会社も多いし、ドライバーと車種を選ぶことができない。

美しき解決法

見てきたように、既存ビジネスの問題点を改善するためにITインフラの力を借りて見事な解決方法を提示したのがUberだ。シェアリングエコノミー、新しいWebサービスという切り口にとどまらず、Uberが行ったことはiPhoneと同じく既存ビジネスの破壊的改善だ。

破壊される方からしたらとんでもないことなので、日本だけではなく全世界で既存ビジネスと衝突しているが、サービスを選ぶ権利は客にある。我々が声を上げれば日本でもUberが今後一般化するだろう。

 

Windows PCの逆襲

ここ数年PCの売上は全世界で伸びていない。2016年の年間出荷台数は前年より-6%の見通しである。

itpro.nikkeibp.co.jp

PC出荷は法人向けと個人向けに分けられるが、近年は両市場で課題を抱えている。

ボールペンとなったPC

http://www.sozai-library.com/wp-content/uploads/2014/07/2550-450x337.jpg

法人向けPCは”文房具”と化している。多くの企業はPCにこれ以上の大幅な進化を求めておらず、安くて丈夫な製品があればよいと考えている。ボールペンに進化を求めている人は少ないだろうし、新商品がでたから部内のボールペンをすべて買い換える企業は皆無だろう。PCはボールペンとなったのだ。以前は新OSや新CPU発売されれば、PCを買い替える層が一定層いた。

性能を求めなくなれば価格勝負になる。自前で全ての部品を開発できないPC各社はHDDやCPUを他社から調達している。大量に部品を購入すれば単価が下がるので、グローバルで大量にPCを販売しているベンダーが有利になる。Q4の結果を見ると、Lenovo, HP, Dellの上位3社が伸びて寡占化が進んでいる。大量生産・販売しているPCベンダーしか生き残れないことを意味している。昨年からニュースになっている富士通、東芝のPC部門売却話はここに起因する。

とは言え、会社で働くのにPCの代替はでてきていないので(企業でスマホだけで働ける人は少ないだろう)、法人向けPCの需要は大幅に減ることなく、低成長を今後続けるに違いない。

f:id:tkan1111:20170206174004p:plain

スマホが削る個人向けPC

個人向けPCの不振は、おなじみスマホとタブレットの影響をまともに受けたのが原因だ。自宅でPCを使う層は減少し、スマホとタブレットでネットにアクセスする層が増大した。以前はPCでしか利用できなかったWebサービスもあったが、最近ではスマホ・ファーストになったので、ますますPCを使わなくて済むようになった(タブレットでさえ大画面スマホに飲み込まれようとしている)。

Microsoftが開く新しい地平

https://c.s-microsoft.com/ja-jp/CMSImages/SurfaceHome_6_FeaturePivotPanel_1_V1.jpg?version=7652482e-7f03-197c-6e6b-558b26ce51a9

ここにきて個人向けPCの減少が鈍化しはじめている。スマホに代替できるPC需要はすでに置き換わり、パーソナルコンピューターを使わないとできない作業を行う、いわばクリエイター層が個人向けPC市場の主役となっている。現にクリエイターに好まれるAppleは、iPhoneユーザーの流入もありMacのシェアを伸ばしている。っそのAppleの流れを止めるために生まれたのが、Microsoft Surfaceだ。今までMicrosoftはWindows OSと周辺機器に注力してWindows PCの開発は他ベンダーに任せてきた。DellやHPなどPCベンダーとOSを開発するMicrosoft、CPUマーケットを牛耳るIntelが協業しながらWindows PC市場を支えてきた。

ところが、スマホの登場と、iPhoneに引っ張られてシェアを伸ばすMacにより、Windows PCの販売台数は減少した。

Microsoftは2012年に方針を展開し、自社開発のタブレットPC『Surface』を発表した。WindowsをMicrosoftから購入してPCを販売しないといけない他社PCベンダーはコスト的にデザインに金を掛けられなかったが、Microsoftは自前のOSを使えるのでAppleと同じ土俵で戦うことができた。

デザイン面でもMacに劣らないSurfaceはクリエイター層に浸透し始め、Windowsブランドの向上に貢献した。iPhoneに軸足を置き、Macへ注力しなくなったAppleとは対照的だ。スマホでの競争に敗北したことでMicrosoftはPC市場に注力せざるを得なかったのだ。

海外の空港では以前はiPadをよく見かけるが、今ではSurfaceをよく見るようになった。コンサバティブでビジネス向けのイメージが強かったMicrosoft製品が、ここまで変わるとは筆者は想像できなかった。

Surfaceに続く他PCベンダー

http://i.dell.com/sites/imagecontent/products/PublishingImages/precision-coming-soon/precision_landing_page_1.jpg

他のPCベンダーもようやくMicrosoftのあとを追うようになった。CESでは、デルは27インチモニターをもつクリエイター向け『Dell Canvas』を発表、HPがハイエンド向けに発表した『EliteBook』の最新型は液晶が360度回転する。いずれもコンシューマー向けに開発された新製品だ。

ascii.jp

pc.watch.impress.co.jp

法人市場の寡占化が進み、個人市場ではスマホの脅威が一段落した今、DellとHPなど上位企業には余裕が生まれ、Microsoftに負けない革新的製品を開発できるようになってきた。iPhoneへ注力しているAppleとは反対に、スマホを持たないWindows PCベンダーはMacが強いクリエイター向けPC市場を獲得しようとしている。

2017年、この流れが続くのか注視したい。

 

Amazon Echoは日本でも流行るのか?

今年のCESの主役はAmazon Alexaだった。この記事によると700のAmazon Alexa対応の製品が発表されたそうだ。自動車はもちろん、冷蔵庫、ロボット、照明などが音声で操作できる。

www.huffingtonpost.jp

 

世界初のまともな音声認識

f:id:tkan1111:20170205185417j:plain

音声コマンドで家電を操作する仕組みは大昔からあるが、使い物にならなかった。音声認識技術が貧弱でまともに認識されず、何度も言わなければならず、認識できるのも単語だけで難しい命令はできなかった。

音声認識の難しいところは、テキストと違い、人によって声質も言い方も異なる点だ。声が低い人もいれば高い人もいる。同じ意味でも異なる単語を使う人もいるし、日本語だと同音異義語がたくさんあり、音声だけでは判別できない。

その状況がビッグデータによって大きく進化した。大勢の人の音声を収集し解析することで、多種多様な音声・言い回しに対応できるようになった。

知っている人は多いと思うが、AppleのSiriでもGoogleでも音声を認識しているのはスマホなどの端末ではなく、サーバー側のシステムだ。サンプルと照合してユーザーが何を言ったのか判断している。

Amazon Alexaは、システムを通して多くの音声を採集し認識技術を進化させ、一般の人が満足できるレベルまで到達した、おそらく世界最初の音声認識技術だ。初めてまともに使える音声認識機器としてAmazon Echoは大ヒットし、多くのユーザーが使用した音声データがAmazonに集まり、さらに解析技術が進化する好循環が生まれている。

もうひとつのAmazon Alexaの特徴は、流暢な発声だ。Siriの日本語版など聞くに堪えないほどAmazon Alexaの音声はきれいで、従来我々が体験していた電子音声とはレベルが違う。

かくしてAlexaのエコシステムは急拡大を遂げている。

 

 

 

Androidのときと同じ轍を踏むApple

f:id:tkan1111:20170205190028p:plain

日本人にとって身近な音声認識技術といえばSiriだ。iPhone 4Sに導入されて以来、「認識されない」「使えない」と言われながらも少しずつ進化し、使用するユーザーも増えてきている。

ところが未だに誤認識は多いし、機械音声もひどいものだ。日本語はもちろん、英語でもAmazon Alexaに差をつけられている。

垂直統合を是とするAppleはSiriでも囲い込みを行い、他社の製品にSiriの使用を許可していない。いつものパターンだ。

SiriはiOS 10でやっと他社アプリに解放された程度で、Appleのアプリが制御するCarPlayは各自動車メーカーがようやく採用し始めたところだ。

自社製品・アプリへ無償で自由に取り込めるAmazon Alexaと比べて敷居が高い。自社に囲い込み、ブランド価値を維持し、高い利益率をあげるのがAppleのテーゼなので仕方がないが、Androidがスマホを席巻したのと同様に、音声認識分野でもAppleは先行者利益を得られず、市場を占有できていない。

日本では?

日本語の障壁もあり、Amazon Alexaも対抗馬であるGoogle Homeもまだ日本へは進出していない(日本企業が地の利を得ているわけではないのは残念だが)。

「Ok, Google」を日本へ導入済みのGoogleは、日本でもGoogle Homeを早晩開始するつもりだろう。Amazonの日本語解析技術は未知数だが、すでに日本市場を制圧しているAmazonがこの分野だけ日本を無視するのは不自然だ。いずれAmazon Echoを販売するだろう。

では、アメリカのように日本でもAmazon Echoのようなスマートスピーカーは流行るのだろうか?

単身者には流行るが、家庭では難しいと筆者は考える。狭い日本の住居で単身者ならスマートスピーカーは使いやすいが、複数の家族が集まる狭小なリビングでは使いづらい。テレビの音が流れ、会話が交わされる中で音声コマンドを認識しづらいし、家族とは言え他者がいる前で予定などをチェックしたくない。

もうひとつ、アメリカとの差は”音声”に対する考え方だ。これだけスマホやSNSが流行っても、アメリカ人のコミュニケーションの中核は会話だ。

ascii.jp

この記事にもあるようにアメリカ人は会話が大好きだ。仕事をしていても日本人ならメールでやり取りして終わらせるところを、すぐに音声ミーティングを設定したがるのはアメリカ人だ。待つのが嫌いで、すぐに結論を求めたがるアメリカ人にとって会話はもっともダイレクトで素早い手段なのだ。

日本人は違う。特にSNS世代である若者は会話よりもLINEなどのメッセンジャー機能を好む。

 日本語固有の特徴も課題だ。同音異義語、曖昧な文節の順序は音声解析を難しくしている。アルファベットと数字が混ざるとさらに難しい。Qと9など文脈からでないと判断が難しく、ID番号を音声認識する時のネックになる。

 アメリカのように日本でもAmazon Alexaが流行するか今の時点では不明だが、キーボードやタッチパネルによる文字コマンドが面倒なのは誰しも感じるところだろう。まずは、音声コマンドが併用できるぐらい日本語の音声認識技術の進化が待たれる。

ソニーは映画部門を売却すべきか?

ソニーの第3四半期の決算は、ゲーム部門は好調だったが、映画部門の売上は前年同期比マイナス14%とソニー全体の足を引っ張った。メディアはソニーが映画部門を売却の交渉をしていると一斉に報じた。

av.watch.impress.co.jp

 

映画産業は作品によって当たり外れが大きく、売上が安定しない。今季の東宝の『シン・ゴジラ』『君の名は。』のようにヒットすれば大きな増収になるが、見極めが非常に難しい。 

飛べない”円盤”

今まではDVD・Blu-rayの売上を販売することで一定の売上を維持できていたが、ネット視聴が増えて売り上げが落ちている。近年Netflix、Amazonプライムビデオなど定額動画配信サービスが一気に伸びて、欧米だけでなく日本でも”円盤もの”の売り上げが急速に落ちている。旧作Blu-rayなど投げ売り状態だ。

LD、DVD、Blu-rayと高解像度の規格を繰り出すことでコレクターの需要を喚起していたが、次世代規格であるUHD BDはあまり盛り上がっていない。PS4 Proに搭載しないなどソニー自体がUHD BDに乗り気でない。ネットでの動画配信が主流になると判断しているからだろう。

コンテンツの時代

ネット時代になり、過去の成功体験が活かせくなった今、ソニーにとって映画部門はお荷物なのだろうか。

筆者は必ずしもそうは思わない。コンテンツの時代が来ているからだ。定額動画配信サービスが流行ったのは気軽にコンテンツを消費したい顧客が多い証左でもある。この流れが加速し、多くのユーザーが今まで以上に多数の映画をネットで鑑賞すれば、単価は下がっても総売上は増える。実際に今決算でもライセンス収入は大幅に上昇している。

自社の定額動画配信サービスに弱いのは課題だが、コンテンツの時代が続けば音楽部門と並んで映画部門がソニーの売上を支えてくれるはずだ。

 

Nintendo Switchに対抗するためにソニーが行うべきこと

任天堂はSwitchの予約台数についてコメントを差し控えているので、どれだけ売れているか不明だが、既存のゲーム業界に影響を与えることは間違いない。

www.nikkei.com

もっとも影響を受けるのはソニーだ。据置機としてはPS4、携帯機としてはPS Vitaとバッティングする。Switch発売に当たり、ソニーはどのように対抗すべきだろう。

PS Vitaを値下げ

http://www.jp.playstation.com/psvita/hardware/assets/images/kv_vita_pc.jpg

PS Vitaはかなり息の長いプロダクトになっていて、一般顧客の印象は薄くなってきているが、今でも週間10,000台前後日本では販売している。海外では携帯機が受け入れられていないのとスマホに押されて低迷しているが、国内ではまだまだ伸ばす余地がある。2015年秋に18,980円に値下げしてから、1年半経過している。そろそろ14,980円に値下げしても良い時期だ。

Switchは据置機のゲームを携帯できる点が長所になっている。PS Vitaなら基本性能は3DSより高いし、PS4があればリモートプレイができるので自宅のテレビを使わなくてもプレイできる。Wi-Fi環境が拡大している今なら宅外でもプレイできる機会が多いだろう。好調のPS4とあわせてPS Vitaを購入すれば、Switchの利点を潰すことができる。

 モモが主役のゲーム

f:id:tkan1111:20170203154511p:plain

任天堂の強さはハードの性能ではなく、ソフト開発力にある。スマブラやマリオカートなど定番ゲームや緻密に設計されたゲームは任天堂の大きなアドバテージだった。だが、HD以降は自社のソフト開発力がトレンドに追いついておらずスプラトゥーンなど少数を除き、ハードを支えるほどのゲームを開発できていない。Wii U不振の大きな原因である。

ソフト開発力が落ちても、キャラクターは残っている。マリオやポケモンなど豊富なキャラクター資産を使い、他社開発なら平凡な内容でもキャラクターで魅力あるゲームに見せている面が任天堂のゲームにはある。

ソニーはブランドイメージもあり、キャラクター戦略が弱い。本格ゲーマー向けにシフトしているPS4にとってキャラクターは無用かもしれないが、Switchの快走を防ぐために念のため、ここもつぶしておこう。

ソニーのキャラクターといえば、PostPetで一世を風靡したモモだろう。モモなどのPostPetファミリーをつかったゲームを投入し、ライト層へも入り込もう。

 

おまけ:PSクラシックミニを販売しよう

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/95/PSX-Console-wController.png/1920px-PSX-Console-wController.png

 

Switch阻止とは直接関係しないが、ファミコンクラシックミニの成功は任天堂がまだまだ健在なことを示した。ここでPSクラシックミニを販売して、家庭用ゲーム業界を全方位カバーしてしまおう。任天堂の初期ゲームより押しは弱いかもしれないが、パラッパラッパーやバイオハザード、ぷよぷよなど今でも遊びたくなるゲームは多い。販売すればファミコンミニに負けないヒットになるだろう。

 

ソニー視点でSwitch対抗策をいろいろ考えてみたが、空想めいたことばかりで、効果的なアクションはあまり思い浮かばなかった。ソニーのゲーム戦略とSwitchがめざす場所が大きく重複しないからだろう。ソニーはハイエンドの領域、Switchはハイエンドとスマホの中間を目指している。

そこはがだれもいない空白地帯なのか、そもそも両方に押されてそんな地帯は存在しないのか、Switchの成否はそこに懸かっている。

 

有機ELテレビは”第4の矢”

今年のCESで、ソニーとパナソニックが有機ELテレビを発表した。今まで液晶テレビに注力していたのに、日本の二社が同時に有機ELテレビへの参入を表明したのは、現時点で世界で唯一大型有機ELパネルを生産できるLGディスプレイが自社だけではなく、他社にもパネルを供給する決断をしたのがひとつの理由だ。

http://www.ces.tech/CES/media/news-images/photo-gallery/Show Day 4/_M4_7737.JPG?ext=.jpg

LG OLED TV display at CES 2017.

 

一社独占で販売していくよりも他社にパネルを供給・量産して、製造価格を下げ、より多くの製品を販売し、有機ELの知名度を上げる狙いがある。他社パネルで差別化を図れるか心配する向きもあるが、テレビの質はパネルだけで決まるのではなく、画像処理エンジンが鍵になるので、日本の二社でも十分競争になる。液晶も同様で、ソニーもパナソニックもテレビ用大画面液晶パネルを生産しておらず、他社から調達している。

 

今までずっと液晶テレビをプッシュしていた二社が有機ELテレビを発表したのは、現行の液晶テレビでは新機軸を作れなくなったからである。

薄型ハイビジョンテレビは2006年あたりから本格的に伸びてきて、2011年のアナログ停波が成長のピークで、停波以降大きく落ち込んだ。冷え込んだ市場を回復させるために導入されたのが2010年から販売されたフルHDの3Dテレビだった。

3Dテレビは一時期需要を喚起したが、3Dメガネを掛ける手間と、テレビを観る人数だけメガネを用意しなければいけないなどのネガティブな要因のせいで、大きく伸びずに消えていった。

代わりにメーカーが販売を開始したのが4Kテレビだ。2013年頃から本格的に売れるようになり、金額ベースで昨年出荷されたテレビの約7割が4K対応だった。地上波で4K放送はまだ始まっておらず、放送開始時には別途チューナーを購入しなければならない現行の4Kテレビは、かなり無理筋な商品だと筆者は思うが、ハイエンドを志向するユーザーが多い日本では定着した。

4Kテレビも本格的な販売から今年で4年が経ち、そろそろ次の需要喚起を考える時期にさしかかってきている。そこで新たな目玉としてピックアップされたのが有機ELテレビだ。本格的に普及していくのは来年ぐらいだろう。

  • 2006年 薄型ハイビジョンテレビ
  • 2010年 フルHD 3Dテレビ
  • 2013年 4Kテレビ
  • 2018年 有機ELテレビ

 薄型ハイビジョンテレビから数えて、有機ELテレビは”第4の矢”になる。有機EL技術技術が量産化できる時期にさしかかっただけでなく、マーケティング的に必要になってきたので、ソニーとパナソニックは有機ELテレビの販売を開始したのだ。

決算から見えるAppleの次の一手

Appleは2017年度Q1の決算を発表した。

iPhoneの販売台数は過去最高を記録し、電話記者会見でクックCEOは、iPhone、サービス、Mac、Apple Watchで過去最高の売上だったと強調した。 

iPhoneのiPad化

これだけだと、ここ一年の不調からAppleは脱したように聞こえるが、本当にそうなのだろうか。

クックが言及しなかった製品iPadは前年同期比22%マイナス、好調だったApple Watchを含む「その他の製品」はー8%だった。その他の製品には品切れが続くAirPodsやApple TVが含まれるのに低調なのはiPodの販売減が大きいのだろう。

一番の課題は、iPhoneへの依存がますます進んでいることだ。Apple全体の売上のうちiPhoneが占める割合は70%に迫る。iPhoneがこければAppleもこける状態は変わっていない。

iPhone 7 Plusが好調で、製品単価は694ドルとあがった。iPhone 6 Plus発売当時はスマートフォンではなくファブレットだと論評されたが今は誰も言わず、5.5インチ画面は普通のサイズと受け入れられている。

クラムシェル型のノートPCの発展型として、Windowsで流行る2-in-1のように、Macの受け皿としてiPad Proに期待していたわけだが良い結果は得られていない。MacBook Proの新型が発売されたこともあり、むしろMacの方が好調だった。

Windowsでもわかるとおり、Macが将来も好調を維持できるかは不明だ。そうなると、今後iPadの領域までiPhoneでカバーしないといけなくなる。iPhoneに大画面バージョンなど複数のモデルを投入する可能性が高い。噂の有機ELやiPhone Proがハイエンドモデルとしてカバーすることになるのかもしれない。iPadのようにiPhone向けのキーボードを販売もあり得ると思う。

 

f:id:tkan1111:20170201113126p:plain

増えるiPhoneファミリー

地域別に見ると、中国が低調で、その他の地域、特に日本が好調だった。Apple Payを開始した影響で日本はiPhone 7が伸びたのだろう。ローカルの新興企業が強いのもあるが、中国は以前の売上が盛り上がりすぎて平常な販売に戻ったとも言える。

Apple全体の北米の売上が占める割合は40%以下で、Appleが売上を伸ばすためには北米だけではなく全世界で売上を伸ばす必要がある。

そのためにも稼ぎ頭であるiPhoneを全世界の様々なニーズに対応するために、モデル数を増やしてくるだろう。新興国向けにiPhone SEのような廉価版、iPadの領域に踏み込む大画面モデル、日本のようなハイエンド志向の市場向けにiPhone Proの投入が考えられる。

すでに昨年は日本向けに独自のSKUを設けてFeliCa対応のiPhoneを発売した。今まで世界単一モデルを目指してきたAppleとしては大きな方針変更だ。モデルを増やせば利益を圧迫することになるが(今回研究開発費は増えている)、iPhoneに頼らざるを得ないAppleとしては、今回好調だったiPhone 7 Plusのような高価格のiPhoneを売ることでカバーするしかない。

強力なiPhoneブランドを背景にiPhoneファミリーを増やし、AirPodsなどのiPhone関連の周辺機器、アプリやサービスなどのエコシステムを強めていくのが今後のAppleの戦略になるだろう。

f:id:tkan1111:20170201122717p:plain

 

 

形を変えて生き残る物語

近年、アメリカでは電子書籍の売上が減少しているそうだ。

hametuha.com

 

日本では雑誌や漫画を中心に電子書籍の売上は堅調に伸びている。「日本は紙の本を捨てられないガラパゴスな市場」という主張は古く、アメリカより遅れたものの今は順調に日本の電子書籍市場は拡大している。

www.garbagenews.net

 

dマガジンというメシア

貢献したのは『dマガジン』に代表される定額雑誌読み放題サービスだ。dマガジンは、170誌以上の雑誌を読み放題で400円の低価格で人気を博している。日本の出版社との交渉は骨が折れるのか、docomoの支払いが良いのか、Amazonなどの外資系企業はついてこれず、この手の新規サービスには珍しく日本企業がリードしている。Kindle Unlimittedは一般書籍が中心だし、例の騒動でケチがついた。

docomoとの契約単価x利用者数が出版社の売上になり、読者が多いほど売上が増える仕組みだ。広告や表紙で雑誌を買わせる時代から、いかにページを読ませるか単発でもよいので魅力的な記事を掲載するかが雑誌の浮沈を決める時代になってきた。dマガジンには人気記事ランキングがあり、雑誌を横断して人気がある記事だけを読むことができる。

漫画の形態まで変えるスマホの影響

もうひとつ大きく伸びたのが無料漫画サイトだ。ネットサーフィンしていると、うざいぐらい広告が出てくるアレだ。無料なのはサンプルや短い話だけで、当たり前だが課金を目的としている。Kindleでも売れているのは漫画が圧倒的に多い。2015年度の売上でも、漫画は一般書籍の4倍ある。

漫画は分厚く冊数も多く場所を取るので、電子書籍に向いていると当初から言われていたが、やはり漫画の電子書籍はおおきく伸びている。

画面が大きい方が漫画を読みやすいが、タブレット販売の伸びは悪く、スマホの小さい画面で読むのが主流になっている。スマホで漫画を読むのが一般したことににより、漫画のレイアウトも変わりつつある。4コマ漫画みたいに縦スクロールで読めるレイアウトが増えてきた(スマホで読みやすい縦スクロール対応した小説というのも一案だと思うが、本題から逸れるのでここまで)。 

形を変えて生き抜くコンテンツ

今後も電子書籍市場は日本では堅調に伸びそうだ。出版業界は不況で弱っている。以前は出版業界独特の物流を守るために電子書籍には及び腰だったが、そんなことは言っていられない。自分の食い扶持が危ないのだ。

docomoのように外部の企業がコンテンツを有効的に販売する方法を出版社に提示し、既存の販売形態とは異なる新たなサービスを今後もだしてきそうだ。それによって、雑誌や漫画が今までとは別の形態に変わるかもしれないが、活版印刷の昔から書籍(コンテンツ)は技術とニーズによって形を変えてきた。

漫画主体のドラマや映画が日米ともに多いように物語コンテンツの重要性は変わっていない。これからも形を変えて良いコンテンツは生き残るに違いない。